唐突に参考書批評を更新します。
今回槍玉に挙げる二冊はともに評価が高いのですが
方針には大きな差異があります。
そして、その背景には昨今の受験事情を語るのに外せないトレンドがあります。
このところの大学受験では、難関大学も含めて受験生の多くは現役の高校3年生です。
以前は浪人率の高かった京大や北大もそうなってきています。
ところが多くの受験本はいまだに浪人生を想定しています。
つまり学校を完全に無視してこういう順番で参考書・問題集をこなせば○○大学に合格しますよ
と提示している。それを参考にしても、学校を完全に無視できる強靭な意志力の持ち主以外は
かえってどっちつかずになって学力を下げてしまいがちでした。
ちなみに、拙著では近未来の受験生を想定し、さらに現役志向が強まることを前提にしています。
昔は受験生と言えば受験勉強だけをやっていられる浪人性を指す言葉だったかもしれませんが
今は違う。ましてや今の中学生が受験するころには浪人生は激減し、浪人ということば自体廃れているかもしれません。学校のカリキュラムを前提にそれをどう補強するかという現在および将来の受験生を想定した拙著ですが、生徒の急激な伸びを見る限り決して早すぎる内容ではないと確信しています。
話がそれましたが、「和田式高2からの受験術」はこのトレンドを反映して
いかにして学校を受験に生かすか、いかにして学校と折り合いをつけるかに相当のページ数を割いています。その結果、和田本の中でも特に今の生徒に役立つ内容になっているというわけです。
しかし、このトレンドがほとんど当てはまらない領域が存在します。医学部受験です。
医学部の一般入試は最優秀層が集中する東大・京大を除けば今で浪人占有率が相当高いのです。
特に、私大医学部では推薦を除くと大半の合格者が浪人生です。
大学側もこの風潮を問題視するからこそ現役生を優遇したり現役生限定の推薦入試を拡大したりしているのでしょう。
「医学部受験の極意」は数ある和田本、いや受験ノウハウ本の中でも特に徹底した具体的マニュアル本です。科目ごとの学習法、カリキュラムは具体的かつ戦略的で各大学の分析も詳細です。
まさに一日中勉強だけしていられる浪人生にぴったりの内容と言えます。
対象によって内容が違ってくるのは当然ですが、個人の経験にだけ頼るのではそういった配慮は難しいもの。それを見事に書き分けて見せた「和田式」の底力はさすがです。
私が今さらここまで肯定的なレビューを書くからには、当然裏もあります。お楽しみに。