日本の入試は中学受験なら算数、大学受験なら数学で差がつきやすいので一見すると理系重視です。しかし、ちょっと見方を変えてみると実は理系、特に数学をあまりにも軽視した入試のようにも思えます。
わかりやすい例でいえば、今や難関大学では英検準1級(建前上は大学内容)レベルの英語力があたりまえです。さらに英検1級レベル(大学内容)の英語力も大いに評価されるのに対し、数検1級レベル(大学内容)の数学力はまるで評価されません。その代わりに高校範囲までの複雑なパズルのような問題を解くことが評価されるのです。
中学入試にしてもそうで、高校内容の体系的な読解力や社会の知識は評価されるのに対し、三角比や二次関数の知識・技能が評価されることはありません。受験算数に関しては、場合の数や平面図形など分野によってはかなりがんばっているので、受験数学よりはまだマシのようにも思いますが。
これが理系軽視に見えるというのは、海外の入試や50年前、100年前の入試と比較しての話です。主要国の主要な形式の数学入試問題は、だいたい日本の受験数学のように複雑な問題はありませんが範囲は広いというものが多いです。日本の入試もどんどんさかのぼっていくと、今より単純な問題が中心だが範囲は広いというところに行き着きます。
日本の(難関大志望の)高校生の理系科目の学習範囲は諸外国と比べたときに遅れをとっているだけでなく、過去と比べても狭くなっているのです。因果関係は不明ですが、受験数学の複雑化と日本の相対的な国力低下は同時に進行しています。狭い範囲での複雑な問題、というと共通テストの英語がどんどんそうなってきているのも気になりますね。