天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

北大と北海道公立高校入試の感想〜毎年傾向を変えるという塾対策

 北大前期はここ数年の英語、数学の難化が一転し、両科目とも点差がつきやすい問題に戻りました。特に文系数学、ここまで大胆にしてくるのはさすがに予想外でした。一方で物理がかなり難化したので、医学部・獣医学部を除けば理系の「難化した数学より理科で稼ごう」という対策をした受験生は完全に裏目に出た形でしょう。同様に、医学部・獣医学部受験生のうち数学頼みで難問で差をつけようと考えていた人たちもアテが外れた形です。今後数年は数学難問型と従来型に近い問題の両方を想定した対策が必要になるでしょう。当然受験生の負担は増えます。

 公立高校の入試は、北大同様に数学の問題がかなり易しくなったように見えます。もっともこちらは予想どおり。去年も易しくなったように見えたのに平均点が下がり、目標平均点に近づけるためには思い切った易化があるだろうと考えられたからです。ただ、だからといって簡単な問題ばかりやっていればいいわけではなく、結構工夫した対策をしていました。他塾でも、今年の入試よりはかなり難しい道コンの過去問を扱ったところが多かったと思います。

 そして、国語や社会の新傾向の問題。単純に難しいかと言われると大人にはむしろ易しく見えるのですが、従来型の傾向の問題に慣れていると面食らったという以上にできなくなる可能性が高いです。単純な知識や小手先のテクニックだけで問題を解くことに慣れてしまった頭では処理が間に合わなくなるからです。追い込みと称して、古い過去問や単純知識の復習を懸命にしていた受験生は、むしろそのせいで点数を落としてしまった可能性があります。

 国語は私がピンポイントで変だ、と言っていた抜き出し問題がなくなりました。ろくに内容を読まずに形式だけ揃えるやり方が通じなくなったという点では「よくやった教育委員会」と言いたいところですが、採点する側の負担が大きくなるなど別な問題も出てくるでしょう。

 社会も用語の書き取りは公民に集中し、理解や応用力を問う問題が中心になっています。用語が公民に集中するのは、現象理解に直結する用語を選んでいるからでしょう。論述問題については、対策として解いていた他県タイプの問題ほど洗練されていなかったのではないかという感想も聞かれましたが、よく工夫されているとは思います。一応過去数年はこの方向で動いて来ていたのですが、基本とは言えない人名や地名を書かせる問題があったりして「用語をしっかり書けるように」という呪縛がまだまだ有効だったと思います。

 このままの方向で振りきれてくれればいいのですが、まだまだ今年の北大のような揺り戻しにも警戒が必要となると、引き続き受験生はもちろん、塾としても対策が難しいでしょう。従来型と新傾向の両睨みで勉強する負担は大きいと思いますが、塾に通えるかどうかでの有利・不利を軽減する効果はあるのかもしれません。とはいえ、現状だと市販の参考書で新傾向の対策をするのは難しい科目もあります。中学受験用や大学受験用ならたくさんあるのですが、高校受験用だと塾用教材や学校専用教材が先行していますからね。