天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

札幌南高校は大学合格実績の公開度が素晴らしい

 

 札幌南高校は地方トップ校としてのプライドからか、カリキュラムが厳しいので安易な気持ちでは入学してほしくないという切実な事情からか、大学合格実績をかなり詳細に公開しています。

 

www.sapporominami.hokkaido-c.ed.jp

 最近は、現役・浪人別の合格実績を公開するのは当たり前になってきています。札幌南高校は、それに加えて、なんと大学ごと、前後期別の受験者数と合格者数まで公開しているのです。すると、受験者あたりの合格者数が多い、つまり合格率が高い大学とそうでない大学がはっきりします。ここから、よく言われている医学部志向や道外志向以外にもいくつか見えてくる傾向があります。道内の中学生のみなさんには、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

 まず、北大について。第一志望者がほとんどになる、前期の受験者は現役だけで見れば100名前後。しかも、その中には他学部とは段違いの難易度である医学部や獣医学部の受験者も10〜20名程度が含まれるため、「東大・京大・一橋大・東工大・国公立医学部」の受験者数が北大(医学部を除く)の受験者数をある程度上回っているということがわかります。

 札幌北高校や西高校、東高校と比べてかなり少なそうというのはイメージどおりだと思います。そして、しっかり見てほしいのが北大前期の合格率も特に高くはないということです。札幌南高校からは、例年難関の後期で北大に合格する生徒が結構おり、これは前期は東大や京大を受験した生徒が中心と見られます。

  札幌南高校からの合格率が比較的高い大学としては札幌医大大阪大学があります。これらは二次試験で比較的難しい問題を出す大学なので、難問にも怯まないという学校のカラーが反映されていると言えるでしょう。そのぶん、共通テストや北大対策のような、比較的易しめの問題を確実に取るという勉強は、他の進学校と比べてウエートが小さくなっている可能性もあります。

 逆に、明らかに合格率が低いのが早稲田や慶應といった難関私立大学です。この両校には指定校推薦で進学する生徒もいるので、公開されている一般受験の合格率でいうと東大や京大よりも低いのです。早慶の併願先と見られる立教大学青山学院大学の合格率も低いです。これらの大学については、本気で第一志望として対策をする生徒が少ないだけでなく、東大受験者もあまり併願していないということでしょう。国公立は北大を受験するなど、実質的に記念受験に近い受験者が多いのかもしれません。

 さて、これらのデータから何を読み取るべきか。私が強調したいのは「東大などの最難関大学に対応したカリキュラムで学べば悪くても北大くらいは、あるいはMARCHくらいには行けるだろう」というような幻想をもってはいけないということです。早いうちから学校についていけなくなると、ムダに難しすぎる勉強を強いられ続け、結局は基本も身につかないということになりがちです。

 最難関大学の受験者が多数派を占めているとはいえ、実際に進学しているのは浪人を含めても全体の20〜30%程度です。中学時代から全国模試で実績を残していたり、道外の難関私立高校にも合格していたり、英語がペラペラだったり高校内容の数学をすでにかなり学習済みだったりする生徒も入学して来る中での20〜30%です。

 はっきり言ってしまえば、北大(医学部・獣医学部以外)を第一志望と決めているのであれば札幌南高校に入学するべきではないでしょう。もっと厳しいことを言うと、学校の成績や道コンの順位にばかり気を取られているような生徒にはまったくおすすめできません。札幌南高校で深海魚としての3年間を過ごすより、他の高校で身になる勉強をするほうがよほど楽しいし、よりレベルの高い大学に進学できる可能性が高いからです。