天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

進学校の勉強についていくための中学生の数学学習レベル

 進学校の勉強についていくのに必要と思われる最低限の学力は、その地方の難関大学(北大など)を目指す地域トップ校の場合と、全国レベルの難関大学(東大、北大医学部など)を目指す地方トップ校ではかなりレベル感が違ってくることを今年も説明したいと思います。今回は数学について。

 理系に進む場合の数学の進度は、一般的に地方トップ校レベルだと高3の1学期中には数学3Cまですべて終了しますが、地域トップ校程度だと高3の2学期後半というのが一般的でしょう。地方トップ校レベルではふつう高2から文系と理系を分けますが、地域トップ校程度だと文系と理系を分けるのは高3時点ということが多いです。

 例年、北海道だと札幌南高校は他の地方トップレベル高校と同等以上ですが、北、西、東の各校は地域トップ校程度の進度になっています。

 そもそも高校数学と中学数学とでは、量も質も圧倒的な違いがあるということを知っておかなければなりません。首都圏で東大合格者数の多くが通う鉄緑会では、中学数学を1年で終わらせるのに対し、高校数学には5年かけます。もう少し詳しく説明すると、中1で中学数学、中2で数学1A(札幌北校の高1内容)、中3で数学2B(札幌北校の高2内容)、高1で数学1A2Bの入試標準(北大)レベル、高1の冬から高2の夏くらいまでは数学3C(札幌北校の高3内容)と数学1A2Bを並行、その後は東大レベルの演習となっています。数学3Cの習得には数学1A2Bのしっかりした理解が不可欠なので、数学1A2Bに3年近い期間をあてるというのは理にかなっていると思います。

 さて、地方トップ校の数学の進み方は、鉄緑会よりもかなり速いということになります。しかし、北野高校からは京大と阪大をあわせれば100名程度が現役で合格するなど、かなりの生徒がこのペースについていっていることがわかります。今年の日比谷高校や横浜翠嵐高校の東大合格者数に昨年ほどのインパクトはありませんが、日比谷高校は医学部、横浜翠嵐高校東工大や京大の現役合格者が結構いるなど、やはり札幌南高校と比べれば数学についていけている生徒が多いように見えます。

 札幌南高校は東大理三の合格者がわりとよく出ているなど、トップ層に関しては他の地方トップ校と比べても同等以上だと思いますが、それに次ぐ上・中位層では結構な差をつけられていると言えそうです。信ぴょう性は微妙ですが共通テストの平均点などでも差があるようです。やはり、高校入学時点での学力差が響いているのではないでしょうか。首都圏や近畿ではそもそも公立上位校の入試問題が難しいですし、難関私立高校と併願するのも一般的なのです。難関私立高校の入試では数学1Aの結構な部分が出題範囲に含まれていますから、その対策をしていれば高校数学にスムーズに入れます。ちなみに、私が入学した当時のラ・サール高校では数学1Aのうち高校入試の範囲に含まれていないと思われる二次関数と三角比がすべて入学までの宿題となり、入学式の翌日くらいにはそのテストが行われました。入学時点で、曲がりなりにも数学1Aは既習だったことになります。

 北海道の高校に合わせると、札幌南高校なら入学するまでには数検2級(数学1A+2Bのごく基本部分を学習すれば受かるレベル)、その他の進学校なら入学するまでに数検準2級(中学数学+数学1Aのごく基本部分を学習すれば受かるレベル)くらいを目標にするといいのではないでしょうか。入試での、英語と数学の大きくしている札幌北高校の配点はこの意味では非常によく機能しているのではないかと思います。