天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

北海道の高校受験と進学校はどうなるべきか

 北海道の高校受験事情の特徴は、なんといっても公立進学校を脅かせるような私立校が存在しないことでしょう。公立トップ校より上位どころか、トップ校の滑り止めとなるべき2番手校、3番手校に匹敵するような私立校、保護者世代の方にわかりやすく言うと、かつての函館ラ・サールのような高校が存在しないのです。

 公立トップ校にとってはライバル校が存在しないため、授業やカリキュラムを工夫するモチベーションが働きにくいという点では、首都圏などの学校に対して不利になっていると思います。

 しかし、これは進学校の大学進学実績にとって必ずしも良くないことばかりではないと思います。なぜかと言えば、公立トップ校は危ないと感じる受験生が公立の2番手、3番手校に流れる結果、トップ校でもボーダーラインは低くなるので、すでに合格圏の学力に達している生徒が高校入試の勉強に必死になる必要がないからです。多少ミスをしたり問題の質が安定しなかったりしても、上位層にとっては合否に関わらないのです。特に東大、京大が視野に入るような生徒には中学生のうちから高校内容を先取りする余裕が生まれやすいでしょう。これが例えば埼玉や千葉ではそうは行きません。高校入試対策が万全でないと、公立トップ校は危ない。札幌南高校合格者の半数程度は県立浦和や大宮、県立千葉高校だと合格できていない可能性が高いと思います。埼玉や千葉では中学受験だけでなく、高校受験においても最上位層の一部が開成や渋谷幕張、筑波大附属といった他校に流出するため、近年東大などの最難関レベルだと進学実績は目立たないですが、その層以外の学力は道内の進学校より上ではないでしょうか。

 私が考える道内の進学校が取るべき手段は2つ。一つは入試段階で埼玉のように英検、数検の2級以上に加点すること。英語や数学の点数にではなく、総合点に2級なら5点、準一級なら10点を加点するようにすれば上位層が本来やるべき学習に力を入れるモチベーションになるでしょう。

 もう一つは、ライバルとなる私立や国立がある地域と比べれば入学段階での学力差が大きいことを認め、それに沿ったカリキュラムを採用することです。具体的には全員一律に一種類の教材を宿題とするのではなく、比較的やさしいレベルと難しいレベルの教材を併用し、苦手な人はやさしいレベルを優先してマスターするように促すことです。例えば1年生の数学なら入門問題精講と青チャート、2年生の英語なら速単必修編と鉄壁という具合です。これは学力でクラス分けをしていない、下位層もそこそこの実績を上げる一貫校などに見られる方式です。