天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

テレビドラマ版ドラゴン桜の生徒たちは東大を目指すべきか

 今週のドラゴン桜は「共通テストなのに冬じゃない」などとツッコミが殺到したらしいですが、全体的に見てもテレビドラマ版は原作マンガと比べるとかなりファンタジー寄りです。

 原作マンガ「ドラゴン桜2」は舞台が進学校であり、前作とは違いほんとうに東大受験生に多そうなタイプの生徒が早い段階から登場するなどリアリティーの面で特徴があります。

 一方テレビ版では受験にあまり興味がない一般層むけの面白さやわかりやすさを優先しているのか、実は受験にあまり詳しくないスタッフが制作しているのか、現実の入試を考えると突っ込みどころ満載です。舞台も進学校ではないので、東大を目指すべきではないと思えるような生徒も登場しています。

 では、東大を目指すべき生徒とはどういう生徒なのか。作品中では「バカとブスこそ東大に行け」と言っていますが、そもそもドラゴン桜にブスは登場しないし、単純なバカもいないようなので他の基準が必要でしょう。

 私が東大を目指すべきだと思うのは、まず東大が強い分野・業界に進みたいという生徒。例えば、「偉くなりたい」という権力志向があるとか、受験産業が進路の候補に入るという場合であれば東大進学が有利になります。ドラマ版ドラゴン桜でこれに該当するのはフジイとケンタでしょう。

 次に医学部や工学部以外志望のコミュニケーション弱者。あてはまるのも、フジイとケンタでしょう。ドラマでは極端な形で紹介されていましたが、東大にはそういった学生が多く周りの目が優しいのはたしかです。医学部や工学部なら專門の大学という手もありますが、総合大学だとコミュニケーション弱者向けという点で東大が一歩リードしていると思います。

 また、「東大に入らないと学歴コンプレックスが不治の病になりそう」という生徒も東大を目指すべきということになるでしょう。東大に合格することは学歴コンプレックスの特効薬からです。これに当てはまるのがフジイとアマノ。

 もうひとつ、大学に入ってからやりたいことを探したいという希望がある生徒も進振りのある東大が向いています。当てはまるのはハヤセ。

 こうしてみるとフジイとケンタについてはぜひとも東大を目指すべきだと思います。アマノ、ハヤセについても可能なら目指すほうがいいですね。コスギは別に目指さなくてもいいのですが、学力的に無理なく合格できそうなので目指しても問題ありません。

 問題なのはイワサキとセトです。コスギらとは異なり、現実世界なら1年ではまず間に合わない量の学習が必要な上、そもそも東大とはあまり関係ないどころか、東大に進学することがむしろ障害になりかねない目標、それもはっきりした目標を持っているからです。イワサキはスポーツのプレイヤーとしての環境が整った大学・コースを目指すべきだし、セトは地元の大学のほうが将来につながるのではないでしょうか。もちろん、学力を伸ばすために東大を志望校として勉強すること自体はプラスになるでしょうが、東大一本に絞るとか浪人してでも東大に、というのは本末転倒だと思います。