天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

標準レベル網羅型参考書比較(学校専用教材)

昔は網羅型参考書といえば「チャート」でしたが
今ではそのチャートに有力なライバルが複数登場しています。
いくつかは学校専用教材であるため、知名度が低いのですが
はっきりいってしまうと内容的にはチャートより使いやすくなっています。
「チャート」の欠点を修正する形で編集されたのが後発のライバル本だからです。

知名度の低い教材よりチャートを使ってほしいという生徒も中にはいるようですが
目的が学力をつけるためであれば後発本の方が優れています。
チャートではなく後発本を採用してくれた先生に感謝すべきでしょう。
本稿では主に学校専用教材を扱います。

さて、今回紹介するのは標準レベルの教材です。
黄チャートレベル、といえばわかりやすいでしょうか。
ラ・サール高校で伝統的に採用されるなど定評のあった黄チャートですが
最近は明らかに後発本に押されています。

まずは東京書籍の「ニューアクションβ」。
市販教材から学校専売教材になってしまったのは残念ですが
「解法の要点を3 段階
で表した『解法の手順』を示すことで,例題の
解答の流れがわかるようにしています」
というのが最大の特徴。
これを私は「答案の設計図」と読んでいて、
解法を理解、暗記するために非常に便利になっています。
少し上のレベルの市販本では「標準問題精講」がこれに近い構成なので
続けて使えば十分難関レベルにつなげられるでしょう。

もう一つ紹介したいのは啓林館の「フォーカスアップ」。
こちらは何と言っても「行間を省略しないていねいな解答」
が特徴でしょう。「チャート」の弱点をピンポイントで補強したかのようです。
「チャート」では紙面の都合で解答を省略したところがあるため、「ここではなにをやってるんだ?」
と詰まってしまう生徒が多いのです。
市販本では「チョイス」など河合出版の問題集に同じ方針のものが多くなっています。

では「黄チャート」を後発本と比べたときの特徴は何か。
それは「CHART]に代表される周辺事項の解説の詳しさでしょう。
数学が大好きでたまらない生徒にとってはそれが面白いのかもしれませんが
私にはさっぱりその良さがわかりません。
そして、周辺事項の解説という点にこだわれば「本質の解法」という後発の市販本がよくできており
この点でもチャートはピンチです。

学校でチャートが採用されている場合は適切な補助教材で弱点を補ってやるといいでしょう。
フォーカスアップ的なわかりやすさとニューアクションβ的な覚えやすさを兼ね備えた
センター試験よく出る過去問トレーニング」が一押しです。


まとめ
解答のフォーカスアップ、設計図のニューアクションβ、周辺知識の黄チャート
というのがそれぞれの特徴だと思います。
後発本を持っている人が「黄チャート」を買う意味はありません。
「黄チャート」でよく詰まるようなら「よく出る過去問」の併用が有効です。