天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

大学の大まかなランクについて(指導者向け情報)

まず、この記事についてですが基本的にアマチュア指導者向けの
情報となっています。教わる側が知っていて役に立つことはあまりないでしょう。
それと、薀蓄はいいからデータだけ見せろ、と思う方は
先に記事の中ほどにある表をご覧下さい。

こういう内容の記事を書くのは、ネット上で出回っている受験情報には
やたらとバイアスのかかったものが多く、また正確な情報は細かすぎて見にくい
という現状のなか、やる気のある指導者の皆さんにとって役に立つものを作りたかったからです。
そして、これは自分が受験指導をはじめたころに欲しかった情報でもあります。
実際に大学受験指導に携わるアマチュア指導者は名門中学・高校から難関大学
進んだ人が、少なくとも首都圏では非常に多いです。
そして名門校での感覚をそのまま適用しようとするのは時として大きなトラブルの元です。
特に首都圏以外の出身者にとっては、国立信仰や理系信仰など地域独特のバイアスは避けられない。
代表的な田舎の名門校、ラ・サール出身である私個人の例をあげると、
関係者には大変失礼なことですが早稲田や慶應は「スポーツの強い大学」程度の認識でした。
ただの田舎者としてならともかく、受験指導者としてこれではいかにもマズい。
しかし、同業者の例だけとっても私と同じ九州の学校出身の先輩は
早慶をザコ扱いしていたけど…」と語り、関西出身の後輩には
「早稲田ってそんな勉強してまでいきたい大学なんですかね?」と素朴な疑問をぶつけられました。
そのままの認識で指導が行われると、どこかで歪みがでてしまうでしょう。
もともとは、そうした歪みを未然に防ぐため内部研修用に用意した資料ですが
公開したからといって困ることもないので記事にしてみたと言うわけです。


どの大学がどのくらいの難易度なのか、という情報は
各予備校が偏差値として出していますが、この偏差値と言うのが厄介な代物でして
算出する方法(主にサンプルの母集団)によって数値が大きく異なります。
例えば進研模試の偏差値70は河合の全統記述なら60、
駿台全国模試なら50程度に相当すると言われます。
ほぼ一律のやり方で算出されている中学校や高校と違って
単純に「偏差値60の大学」や「偏差値50の大学」というのは存在しないのです。
強いて言えば、わりと広い範囲の大学を偏差値で表すことのできる
全統記述模試の偏差値が「大学の偏差値」として使われやすいようです。


この記事では簡易的な偏差値換算表と高校の進学実績を用いて
大学の入学難易度をかなり乱暴に示したいと思います。
細かい学校の序列についてある程度触れることになりますが、
これ以上の内容をここで議論する予定はありません。
詳細が知りたい方は各予備校のホームページや
細かく高校を格付けしているブログを探してみてください。
フォントを小さくしてウィンドウを大きくすればうまく表示されます。

私立   国公立   進研偏差値 河合偏差値 駿台全国偏差値 上位者が進学する高校
なし    東大   測定不能  70以上    60以上 東大合格率全国トップクラスの一貫校
早慶上位 京大・一橋 80以上  70弱     60弱  東大合格者数トップ10の常連校
早慶上智 阪大・外大 75~   65~     55~  東大に2桁合格者を出す名門進学校
マーチ上位 地帝ほか 70~   60~     50~  東大に2桁合格者を出す進学校
マーチ中下位 多数  65~   55~     測定不能 東大に複数合格者を出す進学校
日東駒専  琉球など 60~   50~     測定不能 地域で2、3番手の進学校

「上位者が進学する」については先に説明します。
各高校で上位1割に入るようなトップ層を除き、まあ上位と言える生徒が
多く進学していると見られるという意味です。
首都圏の進学校を例に挙げると間違いなく全国トップクラスに当たるのは開成・筑駒・桜蔭
2番手グループに入るのは駒場東邦、海城、学芸大附属、聖光などです。
地方によくあるように、国公立医学部率が高い高校もここに入ったりします。
東大に2桁、というランクは医学部志向ガ強い、定員が少ないなど
一部例外はありますが、ほぼそのままで上位私立校や県トップの公立校があたります。
「名門進学校」とはその中でも上位者が集まりやすい高校を指します。
関東では日比谷、県立浦和、女子学院、渋谷幕張などがこれにあたるでしょう。
ただし、平均レベルが特に高いわけではなく上位者以外は他の進学校と大差ないようです。
東大に複数合格者を出すのは公立の地域トップ校や新興の進学校が多いです。
また、首都圏では公立トップ校の滑り止めになる私立の特進コースもこのランクです。

次に大学のランクについて、まず最上位層から。
これにあたる大学は理系なら国公立医学部が多数あるようですが
文系については東大のみです。全国トップクラスの高校でも上位層以外はそう受かりません。
また、上位進学校の生徒がほとんど受けない進研模試では判定の精度が著しく低いです。
次のランクも国公立は京大・一橋、私立は早稲田の政経・法、慶應の法、経済くらいです。
名門と呼ばれる進学校の生徒でも相当上位でないと合格していません。
早慶のそのほかの学部にはわりと広い層に合格者がいるようにも見えますが、
実際のところは一部の学部を除いて国公立との重複合格者が多く、
やはり県トップ以外の公立校からではかなり厳しいというのが実情です。
マーチ上位というのは主に立教法・文や同志社法、中央法などを指しますが、早稲田や上智
下位学部もこのランクです。いわゆる地帝や神戸大、筑波大などの上位国立大学もこのランク。
県内のトップ校で上位にいれば大体合格できると言っていいでしょう。
マーチ中、下位は明治・立教・青学・中央・法政や学習院関関同立と言われる
学群の多くの学部がこれにあたります。ひとくくりにされることが多いですが
それなりにレベルの幅があり、多くの国公立大学がこのランクに属します。
地域トップレベルの進学校で上位にいれば大体進学できるレベルですが、
上位進学校の中下位層もそれなりに受験してくるようです。
私立だと問題の質が明らかに異なりますし、国公立はセンターの配点が高いので
ハイレベルの駿台全国模試だとうまく判定できません。
そのほかの大学ですが、一部の非常に易しいとされる国立大学の中には
日東駒専と同程度といえるところもあるようです。
それでもサンデー毎日にかろうじて載るレベルの進学校からでは
上位一割を除いてしまうとほとんど合格者がでていない状況ですので
それ以外の高校から受験しようという生徒にはイメージが薄いようです。
ちなみに首都圏における偏差値50程度の「進学校」の進学状況ですが、
確かに半数程度は進学するものの推薦で決まるため学力試験は受けない生徒が多く、
国公立志望者は皆無なので受験生でもセンター試験の日程を知らないのが普通です。

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