天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード

書房に収まりきらない人気書・話題書のレビューコーナー。
他書を押しのけて書房に収まらないということは、やはりそれだけの理由があるので
ツンツンモードの辛口批評でございます。信者の方は読まないほうがいいと思います。

「文脈で学ぶ 漢文 句形とキーワード」はZ会らしい硬派な参考書。
設問は基本的になく、網羅性に優れる解説特化型の本です。
句形や重要単語はもとより、論理展開など漢文常識の網羅性は他の追随を許さない
非常にハイレベルな参考書といってよいでしょう。
それぞれの事項には詳しい解説と3行の例文(文脈)がついています。
この例文を読み込めば漢文の総合力をつけることができそうです。

問題は、速単サイズながら非常に重厚長大なこの本をどう使うかです。
それぞれの事項ごとに3行の例文までのっているので知識をまとめるには不向き。
「早覚え速答法」の巻末にある重要事項だけで書かれた文章とは真逆です。
量が多いですから、一通り学習するにはかなりの時間がかかりそうですし、
そのわりに、問題がついているわけではないので1冊で身につけれらる学力は限られます。
そもそも、ここまでの知識をつけたところで得点が上積みされるような大学も多くはありません。
かといって、1から学習するような生徒には説明が硬派すぎると思います。

想定できるのは、既に多くの漢文を読み、解いてきた旧帝文系もしくは早稲田文学部・法学部志望で
十分漢文に時間をかけられる浪人生がメンテナンス用に使うやり方。
あとは、最初から辞書的に使う本と割り切ることでしょう。
間違っても漢文が得意でない人や、他に苦手科目がある人がシコシコ進めていくような
参考書ではないと思います。
生徒用というより、むしろ教授用資料としての価値が高いのではないでしょうか。