天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

「やる気が出ない」と「やらない」

ヤフー知恵袋の受験カテゴリでよく見る質問に
「やる気が出ません。どうしたらいいですか?」
というようなものがあります。
この手の質問に対する私の答えはとても単純。
「やる気がなくてもいいから勉強しましょう」
これに尽きます。

いくら学力的に優秀であったとしても
常にやる気に満ちている受験生など、そういません。
しかし、受験・進学を念頭に置いた学習者の場合、
「やる気が出ない」=「やらない」という図式が
それほど成り立っていないのです。
時には嫌々ながらでも、やるべきことはこなしている。
それが一般的な優等生の姿です。

単にやりたくないから言い訳をしているだけ、のようなときは
「心をきたえる痛快!言いわけ禁止塾(PHP)」
を一読してみるのがお勧めです。

そもそも大人の世界では、何かをやるべきときに
「やる気がないからやらない」は通用しません。
医者は「やる気がない」といって診察を拒みますか?
教師は「やる気がない」といって授業をサボりますか?
いつも食事を用意してくれる人が「やる気がない」
と言ってあなたの食事を抜いたらどう思いますか?

やる気がなくて勉強できない、という主張はむしろ
勉強の経験が少ない人に特有なものであると感じます。
まずはやる気に関わらず勉強することが必要です。
本当になにもできない病的な場合もなくはないですが
かなりのレアケースと言っていいでしょう。
それにも関わらず一向に勉強しないと言う場合、
勉強しない理由が他にあるわけです。

多いのは、何をやるべきかが見えていないケース。
「勉強しなさい」とか「数学をやりなさい」では
具体的に何をどうやればいいかわからないので
やりようがないのです。この場合、
「今日は27ページの単語をひたすら唱えて覚える」
程度まで具体性があれば勉強できます。

物事の優先順位がつけられないケースもよく見ます。
「やるべきこと」と「やりたいこと」とで前者を優先できていない。
例えばやらなければいけないテスト勉強があるのに
だらだらテレビを見ているというのがこのケースです。
徹底した放任主義や逆に完全に管理された環境では
そもそも優先順位という概念が希薄なこともあります。
しなければならないことを、優先すべきこととして
はっきり認識することが、まず必要になります。

さらに「やるべきこと」を優先するのはなかなか大変です。
優先できたことに対するインセンティブ(アメ)と
できなかったことに対するペナルティ(ムチ)が有効ですが
社会全体としてアメを用意するような余裕も
ムチに対する許容も失われているように感じます。
「やるべきこと」を実行できたときには
好きな食べ物・飲み物くらいは用意できる余裕を持ちたいものです。