天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

熱血教師キムタツの東大英語基礎力マスター 2~4

書房に収まりきらない人気書・話題書のレビューコーナー。
他書を押しのけて書房に収まらないということは、やはりそれだけの理由があるので
ツンツンモードの辛口批評でございます。信者の方は読まないほうがいいと思います。


今回は東大英語基礎力マスターの2~4をまとめて紹介します。
性質としては2が単熟語帳、3が文法問題集、4が暗記用例文集。
それぞれ分野は別ですが大型書店だと、まとめておいてあるようですね。


すぐに気づくのは薄い割りに相当なデータ量を詰め込んでいるため、
持ち運びやすさに優れ、網羅性も意外に高いという点です。
「東大もこれで十分!」と謳いながら中身はスカスカの某単語長などとは違います。
そして、中を読んでいくと(いい意味で)収録内容の偏りに気づきます。
見事な東大即応で、まさに「看板に偽りなし」なのです。
あくまで東大英語に対してであり、例えば上智対策として問題の質が高いとは言い切れませんが
東大型をメインに扱う関係者なら直感的に収録内容が優れていると感じるでしょう。
例えば「仮定法はまず型を覚えろ」というようなアドバイスなど
(あくまで東大型ならですが)わが意を得たりとの感想を持たれる方が多いと思います。


問題は、「これで理解出来る生徒はこんな本なんかいらない」と酷評されるvol1と同様
いったい誰がこの本をつかうのか?という点であります。
キムタツ先生のブログによると対象は「センターがボロボロな人」だそうですが
センターがボロボロな人に使いこなすのは困難だと思います。特にvol2。
語彙が東大必須レベルであり、センターよりは幾分上ですし、
一日分をアルファベット順に大量に並べているだけなので、
繰り返しのタイミングがつかめない・上下の語と混乱しやすいなど
暗記用に使うにはかなりやりにくいでしょう。
vol3も解答・解説との対照がやりにくいなど使い勝手がよくありません。
vol4は英文解説・CDつきで文自体も工夫されていますが
単熟語・文法習得を前提としたアウトプット重視の構成なので
単体として見れば、やはり使用者層を想定しにくいです。
これが使いこなせるようなら、作文や解釈向け構文集の参考書に付属する
例文集でも十分な成果が期待できるからです。


結局、実際にこれらをメインで使えるのは
2次レベルまで含めて相当な読み込みをやってきたが
知識面での体系的な学習はしていないという人くらいでしょう。
むしろ、これから過去問や即応問題集をやろうと考えている人が
それを十分使いこなせそうかを確認するという、実力チェック用が正しい使い方のように感じました。
たしかに指導者側としては一回の授業あるいは一回のテストといった割り方に最適で
使いやすそうなので、英語教師の評価は高くなるのかもしれませんが
肝心の学習者側にってはどうなんでしょうか。
既存の学校採用問題集を改良するという発想はわかりますし
確かに収録内容の改良という点では成功しているシリーズなんですが
多くの学校採用問題集にとっての根本的な問題点
すなわち教師側にとっての利便性を優先して
その分生徒には多大な犠牲を強いるという点の改良が甚だ不十分。
したがって、一般書店に平積みというのはいかがなものかと、こう思うわけであります。


いや、東大志望を名乗るならせめてこれくらいは、というコンセプトは徹底してますから
勘違いした受験生に身の程を知らせてくれる良書ではあるんですよ。
ただ、そういう人の学力をどうこうできる本ではないっていうだけで。
実を言うと来年度以降、指導希望者の学力チェック用として導入検討してるんだけど
気合で理解しろ、覚えろで学力が上がるなら参考書なんていらないんだからね!