天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

北海道議会議員選挙(札幌近郊)および札幌市議会選挙の分析

 札幌市議会議員選挙では共産党が10→7、自民党が27→26、立憲民主党が19→18と議席を減らす一方、今まで議席を持っていなかった日本維新の会が5つの議席を獲得するという結果になりました。維新の会は北海道議会議員選挙でも議席を獲得しています。なぜこんなことが起きたのか。

 オリンピックが争点になった市長選挙や、現職が過去最高の得票率を達成した知事選挙とは違い、あまり大きく報道されることもなさそうなので、自分で分析してみました。

 結論から言えば、岩盤支持層の高齢化にコロナ化が追い打ちをかけたことで、ベテラン勢も含めて現職の組織が弱体化していたことが最大の要因だと思います。投票率が下がったので地盤を持つ現職が有利になりそうなところなのに、ベテラン議員が得票率を落とすケースが目立っているのです。ついで、与野党相乗りでオリンピック賛成派の市長を担いだことへの批判、岸田政権の増税姿勢が影響していた可能性もあります。

 まず、維新が道議会で議席を獲得した東区。2019年の前回選挙と比べて自民・渡辺、公明・阿良知両候補の得票率が大きめに下がっており、維新・山崎候補に流れたものと見られます。得票率が下がった両候補は67歳と、選挙区中最高齢でした。

 道議会選挙では、北区でも自民党の現職・吉川候補が革新野党系の新人・石川候補に競り負けています。ここでは保守系の新興勢力である参政党・境候補が6000票あまりを獲得しており、自民党から流れた部分もありそうです。

 札幌市議会選挙で維新の会が議席を獲得したのは定数が増えて8人の中央区、もともと定数の多い北区(10人)、東区(8人)に加え、豊平区(7人)や定数が減った南区(5人)の5区。上位で当選している候補もおり、決してまぐれの勝利とはいえないでしょう。

 中央区波田候補(34歳)は最年少ということもあり1万票以上を獲得し、自民の新人には大差をつけています。北区の荒井候補(38歳)も自民や共産の現職も上回る得票数で立民の現職に完勝。北区では最年少の無所属・浜川候補が3000票以上とっているので、年齢による上積みは限定的だったと思われます。前回は惜しくも次点だった南区の脇本候補も公明や自民の現職を上回る3位での当選で、共産と立民の現職を圏外に追いやっています。

 東区は自民の新人・山田候補がトップ当選する一方、同じく自民の現職が一名落選。維新・丸岡候補は時点の共産元職にも1000票以上つけて当選しました。豊平区の坂元候補は前回2倍以上の差をつけられていた立民のベテランを逆転しての当選。東区の自民同様、豊平区の立民もキャリアの短い方が当選し、長い方が落選しています。

 白石区では維新の小和田候補が落選しましたが、ここは前回まで上位の常連だった無所属議員がいたなどの事情もあって、4位の共産現職から次点(8位)の自民現職まで約400票以内に5名が集中するという大激戦区だったため、自民票を奪うのが難しかったのでしょう。立民を離党した無所属現職が上位当選、立民の現職と新人が絶妙な票数差で2人とも滑りこんだ結果、奇しくも前回までと同じ勢力図となっています。

 本来なら立憲民主党増税に反発する票を自民から奪うべきところだったと思うのですが、市長選挙でオリンピック賛成(≒増税)派の現職を自民党と相乗りで支援したことで、札幌市内では自民党と同じ穴のムジナというイメージで見られてしまったのでしょう。