天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

寮のある私立の難関進学校にはほぼ女子寮がない件

 「東京以外の地域の女子こそ公立以外の進学校の選択肢がない(ことが多い)」

というと、寮が有名な共学の進学校もあるのでは?思われるかもしれません。

 たしかに共学の有名進学校である愛光や西大和、久留米大附設といった高校には寮があります。しかし、これらはいずれも共学化する前は男子校であり、いまだ女子寮は整備されておりません。自宅から通学可能な女子のみが選択肢にできるというのが実情です。そして、松山市の中心部に近い愛光以外の2校は、大阪や福岡の都心部に住んでいる生徒にとって近いとは言えず、東京や神奈川から埼玉や千葉の高校に通うのに似ています。

 高校から入学可能な女子寮がある進学校岡山県岡山白陵くらいらしく、公式HPによるとその岡山白陵の女子寮や下宿は満杯に近い状態とのこと。もうひとつ、専用下宿がある進学校としては長崎の青雲がありますが、こちらは近年東大+京大の合格者が1ケタなのに対し国公立医学部には50名前後合格しているという極端な医学部志向の学校となります。

 前述の共学校に加え、ラ・サールをはじめとする男子校の選択肢がある男子と比べて選択肢がかなり少ない状況といえるでしょう。

 なお、進学校ではなく大学附属校や国際系の学校であれば女子寮を持つ学校が結構あります。関東では早大本庄ICU、近畿では同志社国際関西学院千里国際。その他の地域でも広島のAICJ、九州の早稲田佐賀や岩田(立命館APUコース)、北海道の立命館慶祥などが女子寮を備えています。

 

「東京の女子」が高校受験で不利とは?

 このところ都立高校の男女別定員に関する議論が盛り上がっているようですが、

そもそも東京の女子は高校受験でそんなに不利なのでしょうか?

 たしかに、一部の都立高校を受験しようとする東京の女子は同じ高校を受験しようとする東京の男子と比べれば不利です。また、公立トップ校の受験に際して、学力レベルにあった私立進学校を併願したい場合にも女子は不利です。都内の私立進学校を併願できる東京の女子、あるいは私立の難関校に高校募集が残っている千葉や「滑り止めの星」が存在する埼玉の女子と比べて不利と言えると思います。

 しかし、それ以外の地域の生徒と比べてどうでしょうか?そもそも、東京の女子は高校の選択肢がとても多く、かなりきめこまかく学力に合わせた学校を選んだり、好みの校風の学校を選んだりすることができます。「私立の進学校」こそ都内では受験できなくなりますが、国立の進学校は受験できますし、大学附属校なら私立もたくさんあります。地域によりますが、他県の私立進学校に通うこともできるでしょう。

 東京以外の地域はどうか。上位の進学校に絞ってみれば埼玉では県立浦和高校をはじめとして公立の地域トップ校は男子校です。群馬や栃木も同様で、女子は地域トップ校を受験できません。

 そもそも、たとえば北海道(札幌を除く)のように、都内の上位進学校に匹敵するレベルの進学校がない地域もたくさんあるのです。その場合、東大や医学部を目指す生徒が集まる学校に行きたければ他地域の寮や下宿がある学校を目指すことになるでしょうが、ここで「女子の選択肢が少なく不利」ということが起こります。つまり、上位進学校の高校受験に関してであれば「東京の女子は不利」なのではなく単に「女子は不利」と言っていいのではないでしょうか。

 

 逆に札幌だと中学受験で男子校の進学校があるのに対し、て共学・女子校の進学校がないことで歪みが生じていますが、それはまた別の話。

 

 

都道府県による内申点制度の最大の違い

  難関中学受験では決まった範囲の勉強を決まった時期にこなすという意味での勤勉さが求められます。この能力はだいたい精神年齢の高さに近いので、私は精神年齢が低めの子は難関中学受験には向いていないと考えます。

 一方、精神年齢が低いタイプの子は、内申点を取りにくく高校入試に不利なので中学受験をすべきとの意見が聞こえてきます。これもある程度は事実なのですが、実は結構なレベルで都道府県によって差があります。

 とくに大きいのが、いつの時点の成績を内申点として利用するかという点。全国的には中1の成績から利用するところが多く、精神年齢が低い子が不利になりやすいのですが、どういうわけか中学受験が盛んな地域では中3時の成績しか見ないことがわりと多いのです。具体的には東京、愛知、兵庫、福岡、鹿児島は中3時の成績のみで判定されます。

 また、東京、埼玉、神奈川、大阪は問題が難しく、千葉や京都(探究科)は内申点の比率が低い。福岡、鹿児島の進学校は極端に低くなければ内申点が合否に影響しないといった事情があるので、実は内申点重視といえるような地域は少数派になっています。

 そして、内申点が比較的重視されているような地域では周囲の県と比べて公立高校が弱くなっていることが多いようです。代表的なのが広島県高知県。東大や医学部を目指す生徒が多く集まるような公立高校はなく、難関を目指すなら私立や国立というのが一般的な地域です。兵庫県も中3だけとはいえ内申点、それも実技教科の配点が高いkともあり公立高校が弱いようです。兵庫といえば超難関の私立があるため、私立にトップ層が集中するということはあるでしょうが、一般的に私立難関校の存在は公立トップ校の進学実績に対してプラスにはたらきます。公立向けの易しい勉強しかして来なかった生徒に比べて、難関私立対策もしてきた生徒のほうが高校の勉強についていける可能性が高いからです。

 ちなみに北海道も内申点が重視される地域でしたが、最近は札幌南などいくつかの進学校が当日点のみの枠を設けているので難関大学志望の「内申ブス」が不利だとは言えません。

 

難関私立高校の理科社会対策へつなげるには

 高校入試では、公立だと東京や大阪の難関校でも理科・社会は非難関校と同一の問題です。難問対策は割にあいません。国立の難関校も応用度こそ高い問題が出ることはあるものの、知識レベルは決して高くありません。

 一方で難関私立高校(進学校)の理科社会はふつうに高校レベルの知識を要求する問題も結構出題されます。公立入試で満点近く取れるようにする程度の対策では歯がたたないこともあるでしょう。だからといって、全範囲について高校内容を学習するのは現実的ではありません。大学入試では、いくつかの分野を選択することになります。

 もし難関私立高校が本命ではないのであれば、大学入試で確実に使うであろう分野の基礎をかためておくことをおすすめします。理科は化学基礎、社会は理系志望なら地理、文系志望なら世界史です。それ以上は手を広げず、国語や英語で高校内容に踏み込んだ学習を優先させるといいでしょう。

 しかし、難関私立高校が本命であればそうも言っていられません。公立レベルまで固めると同時に、難関レベルの典型問題くらまではカバーした問題集をマスターしてから、過去問や模試問題集という流れを作りたいところですが、市販の問題集だとちょうどよいレベルのものが見当たりません。数学と比べればごく限られた範囲の受験にしか適さないものの、やはり塾用テキストで便利なものがいくつかあります。定価より高くなってしまいますが、Amazonで売られているものもあります。

 

 

 

 

 

札幌の国公立中学・高校の男女比について

news.yahoo.co.jp

 東京の中学入試だと共学校は男女別に枠があるのが一般的で、たいてい女子のほうが合格最低点(合格難易度)が高いるということが話題になっています。そういうことが起きている最大の原因は、東大や医学部合格者数の多い難関中学の中に男子校はたくさんあるのに対し、女子校は少ないという点でしょう。

 札幌でも医学部合格者の多い男子校があるのに対し、同レベルの女子校が存在しないため、一部の中学で男女別の合格ラインに結構な差があるのではないかと言われており、今年はそれを裏付けるかのようなことが起きています。昨年までは男女別に同数の定員で合格者を出していた札幌開成中が今年は男女別定員を廃止した結果、男女比に大きな偏りが発生したのです。今年の新入生は男子60人、女子100人ほど。女子の人数が男子の1.5倍を超えており、かなり女子のほうが多いと言えます。

 もうひとつ、教育大附属札幌中の場合、附属小からの進学率が女子がほぼ100%なのに対して男子は結構な割合で北嶺中に抜けるため、中学入試の定員は事実上男子のほうが多いということが常態化しています。おそらくは合格ラインも女子のほうが高いと見られますが、今年は新入生の数も女子のほうが明確に多かった模様です。附属中には研究のためという大義名分があるので男女別定員が正当化される部分もあると思いますが、それにしても完全に同数では学力格差を無視できなくなってきたということでしょうか。

 さて、東京以外だと高校入試の男女別定員というのはあまり一般的ではありません。したがって、男女別の生徒数に偏りが見られる高校が多くなっています。札幌の主な進学校・大学付属校について、まとめてみると以下のようになります。

男子が多い高校 札幌南 札幌光星(私立)

男子がやや多い高校 札幌西 札幌第一(私立)札幌日大(私立)立命館慶祥(私立)

女子がやや多い高校 札幌北 札幌東 札幌月寒

女子がかなり多い高校 札幌旭丘 札幌国際情報

 

北海道高校ガイドブックには細かい数字も出ているので必要な方はそちらをご参照ください。

 

 

 

 

東大足切りラインの実際 ドラゴン桜の前作は影響大だったが。。。

注 最後の方にドラゴン桜最終回の重大なネタバレ(入試結果)を含みます。

 

 ドラゴン桜最終回では文科三類だと足切り濃厚のセトについて、出願状況を見ながら足切りを回避できそうな科類を選ぶというシーンがありました。

 現実の足切りラインも文科三類は8割前後のことが多く、共通テストで7割弱というセトの点数ではたびたび7割を切る文科一類や二類のほうが通過の可能性が高いと言えます。

 もっとも、東大、特に文系の足切りラインは一次試験の難易度に加えて社会情勢の影響を受けやすく、実際の推移を見ていくといろいろと面白いことがわかります。

todai.info

 例えば2011年の東日本大震災原発事故の後、地方の学生が遠方への受験、特に東京の大学を避ける動きが出ています。2012年はセンター試験が易しかったにもかかわらず、それまで8割を超えることが多かった文科三類の合格ラインが7割そこそこまで下がり、センター試験が難しかった2013年〜2016年の間は一度も8割に達していません。文科一類に至っては最高でも6割に満たないという事実上の「底抜け」状態でした。

 また、2020年はコロナショックに加え浪人して「入試改革初年度の受験生」になることを避けるための安全志向が強くはたらき、理科1類を除く全ての科類で足切りラインが7割切りました2021年も同様の傾向が続いています。

 逆に2006年はセンター試験が易しく、文科一類(79%)を除く全ての科類で足切りラインが8割を超えています。難易度のほかに影響を与えたと見られるのが、実は2005年に放送されたドラゴン桜(前作)です。当時のテレビドラマ版ドラゴン桜には東大受験ブームを起こす力があったということ。結果としてドラゴン桜の真似をしてギリギリで一次を突破しようとした受験生の多くは二次試験に進めないことになってしまいました。

 前作と同じようなブームが起きれば、セトのような共通テスト大失敗からの逆転合格は起こりえなくなってしまいます。東京の新型コロナウイルス感染状況を見ていると、当時のようにはならないようにも思えますが今回はどうなるでしょうか?

 

 

数学の音読教材

  「学習の作法 中学受験・中学入学準備編」の中で算数から数学に進むとき数学用語が障害になるケースがあり、教科書を音読することがその対策になると書きました。ただ、今の検定教科書は説明が非常にていねいなことで、逆に音読用教材としては使いにくいと感じる人もいそうです。その場合、数学用語に慣れるための音読教材としてであれば体系数学(一貫校用の検定外教科書)のほうが使いやすいでしょう。完全に未習の範囲を初めて理解するときには検定教科書、その内容を定着させる段階では体系数学という使い分けるのも良いと思います。体系数学はふつうに市販されているので、英語の検定外教科書などと比べれば入手も容易です。