天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

なぜ理系の秀才はみな医学部に行くのか?

このところブログ界で人気の話題なので便乗して著書の宣伝を。

釣り記事が得意な藤沢数希氏がまたまたやってくれました。
http://news.livedoor.com/article/detail/4609178/

医者の収入が高すぎるからみんな医学部を目指して当たり前だ、とのこと。
もちろん藤沢氏が本気でそう思っているわけではなく
実際は自分のような外資投資銀行マンの方がよほど仕事もラクで儲かっている
というのが彼の主張なのだと理解すべきなのですが文面に釣られたコメントのなんと多いことか。

藤沢氏は(おそらく)架空の研究所によるデータとして
「『東大理1卒』の5%はワーキングプア、それに対して『医師免許取得者』の負け組15%は年収1000万以上」
という表をでっち上げています。これが燃料となりコメント欄が燃え上がる。
実際、現役医師と思われるような方々が次々コメントされていますから
藤沢氏の狙いは大当たりです。
さすが煽ってナンボの世界で活躍されているだけのことはある。

実際にはコメントにもあるとおり。年収1000万を超える若手勤務医などそういません。
そもそも国公立でも医学部入学者の5~10%はドロップアウトしたり国家試験に落ちたりするので
『医師免許取得者』になれないのです。
実はこのリスク、東大理工系学部より高いのですよ。
東大でも学部によってはかなりリスクが高まりますけど、そのあたりは私とGLS予備校原田校長の共著
「親と子の最新大学受験情報講座 理系編」に詳しく書きました。
また、激務にもかかわらず「なぜ医学部を目指すのか」ということも考察しております。
興味がある方はぜひ「親と子の最新大学受験情報講座 理系編」をお求めください。

問題は、リスクとリターンという見方をすれば医学部は大損だというのに
藤沢氏がでっち上げた表のように誤った認識を持ってしまっている方、
特に保護者の方が大変多いということでしょう。
つまり、情報格差こそが問題なのです。

解決策として、私は池田教授の「医師免許制度の改革案」
http://news.livedoor.com/article/detail/4609584/
を支持しています。

が。さしあたりやっているのは
「医療関係者は我が子を医学部に行かせたがらなくなっている」
という生の声を保護者の方にお伝えすること、
そして医学部志望の生徒・医学部に入った元生徒に対しては
「今の非人道的な激務薄給ではその道から逃げるのは合理的選択であり、何ら恥ずべきことではない、少なくともうちの業界でなら大歓迎されるからあまり思いつめないように」
と指導することです。