天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

ラ・サールの先生をバカ呼ばわりする松永暢史を切る

新刊の初校終了記念に久々の辛口レビューをしてみます。
ファンの方がいれば、見ないでください。

要約すると、最近の入試問題は小手先のテクニックで解こうとすると間違えるようにできているから
テクニックだけを教えるのは受験にとって有害。
ではどうすればいいのかを新刊に詳しく書いたのでお楽しみに、ということです。
とはいえ、進学塾や進学校では当たり前の内容なのですが。

この記事では「コツのコツ」「ウラのウラ」を題材に
主に補習塾で行われる「国語教育」の問題点を指摘します。
進学塾とは違うことに気をつけてください。


知る人ぞ知る奇書
「中学入試国語記述のコツのコツ―灘・開成もラクラク突破」
の文庫版が出ています。評判についてはアマゾンのレビューを見ていただきたい。
間単に内容を解説すると、同じシリーズの「中学入試国語選択問題ウラのウラ」
と同様小手先のテクニックを解説し、難関だろうがそれで解けると言おうとした本で
筆者の偏見に基づく誤った教育思想や罵詈雑言にもかなりの分量が割かれています。
記述問題への対策としてはほとんど役に立ちそうもないので
記述問題の対策をしたい人には
開成中学入試問題講義の実況中継国語」
がおすすめです。

特に開成・桜蔭・ラ・サールをかなり口汚く罵っており
これらの学校の卒業生は人格破綻者だと言わんばかりです。
訴えられてもおかしくない、というレビューがついていますがまさにその通り。
教育上非常によろしくないので、決して子どもに読ませてはいけません。
が、卒業生のはしくれとしては反論する大義名分を与えてくれたと見なします。

松永先生はなぜ、これらの学校を嫌うのでしょうか?。
答えはとてもシンプルなことなことだと思います。
「中学入試国語選択問題ウラのウラ」にも徹底して見られるような、
先生が得意とされている小手先のテクニックが通用しないということです。
その証拠に、「コツのコツ」に記載されている答案の中には
おそらく0点だと思われる全く的外れなものもあります。
 
ちょうどタイムリーに
松本徹三さんの受験=小手先のテクニック説に
http://agora-web.jp/archives/915751.html
井上晃宏さんが反論されていますが
http://news.livedoor.com/article/detail/4594838/
どうやらここでも松永先生と私のような認識の相違があるようです。
松本さんは「受験について知らない」ということなのでそれが原因なのでしょうが
松永先生のようなトンデモ本の著者がプロを名乗っている以上致し方のないところでしょう。
かなり淘汰されてきているものの、小手先のテクニックしか教えない塾がまだまだあるのも事実のようです。
実際には井上さんの言うとおり、最近の入試問題はむしろ小手先のテクニックで解こうとする受験生を落とすように作られています。

こういった小手先のテクニックは、できない子に点数を取らせるための教育的配慮といえないこともないでしょう。
実際、補習塾ではいまだに主流といっていい教え方です。
しかし、できない子に点数を取らせる問題を出さないからといって名門校を激しく罵るのは
どう考えても筋違いではないでしょうか。
そういった補習塾が進学塾を名乗っているのも問題ですね。

小手先のテクニックだけで解くことの問題点として
設問の指示を完全に無視しているということが挙げられます。
国語の読解問題はたいてい「次の文章を読み、後の問いに答えよ」というものです。
小手先だけだと「次の文章を読み」を無視していることになります。
文章を読まず、文を読んで答えるようなやり方は国立大学には通用しない。
したがって、進学校の入試にも通用しないのです。
長年「先生」と呼ばれちやほやされてしまうと、全く自分の非を認めようとはせず
ついには問題が悪い、作成者はバカの壁の向こうにいると言ってはばからない
あわれなピエロとなってしまうのでしょうか。
開成やラ・サールの入試問題に込められたメッセージは、小手先のテクニックではなく
教養や学習する姿勢を身につけた生徒を取りたいということだと解釈できます。
松永先生はそのメッセージを受け取ることに失敗してしまったのでしょう。