天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

生徒をミスリードする変な入試問題の今

 北海道の高校入試問題は改革の過渡期にあると思われるのですが、全国でみると変な形式の

入試問題からは解放された中学生も結構います。解放された中学生が結構いる、というのは解放された地域はまだ決して多くはないのですが、人口の多い地域で解放が進んでいるからです。

 生徒をミスリードする変な高校入試問題といえば、まずは理科社会の用語記述問題。今のところ北海道はこれが大好きです。用語の書き取りの配点の高さは、生徒に対して、とにかく用語を覚えることこそが理科社会の学習であるという強烈なメッセージになります。無論、意味や使い方を理解せず用語のみ覚えろという出題意図ではないでしょうが、実際には多くの生徒がそういう覚え方しかしなくなります。当然、学力にはマイナスの効果が大きいでしょう。確かに暗記が現象理解に直結するような用語(電磁誘導とか初期微動とか)もあるので、必ずしも用語の書き取りを廃止まですべきとは思いません。しかし実際に東京、神奈川、愛知では廃止され、兵庫県でも理科での出題がなくなり、今年から千葉県もそこに加わるのではないかと見られます。数は少ないですが、人口比ではかなりのインパクトがあります。用語の書き取りよりは正しい意味や使い方を選ばせる問題への対策の方が学力向上に資するでしょうから、都会の生徒の方が効果的な学習がしやすい環境にあるといえます。

 私は国語の抜き出し問題もあまり良くないと思っています。特に文中の空欄に当てはまるような語句や文を抜き出せという設問だと、文章内容より当てはまる形式を頼りに答えを探す生徒が多くなるので、読解力を伸ばそうというメッセージにはならないでしょう。東京都立(共通問題)のマーク式➕作文のような形式の方が読解力、表現力を伸ばすのに向いているのではないでしょうか。

  1.  なお、大都市圏以外だとトップ校まで定員割れが常態化して事実上高校入試が機能しなくなるような地域もどんどん増えているようです。地域格差を助長するばかりでなく、受験する側も運営する側も無駄な負担ばかり多い入試制度はもうやめて、高校入試も全国共通テストと都会の一部の学校では個別試験というような制度にする方が国全体の学力も向上すると思います。ちなみに、マーク式を導入した地域の大手塾では、科目によっては傾向が似ている国立高専の全国共通問題を練習用として紹介しているようです。