天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

読解に必要な古文単語

一部受験生には収録語数の多い単語帳が人気です。
一冊仕上げれば大丈夫だという安心感があるからでしょう。
しかし、本当に大丈夫なのでしょうか?
網羅系古文単語帳の代表格である「フォーミュラ600」
を検討してみます。

「ひとやりならず」「らうらうじ」といったややマイナーな
古文単語まで漏れなく収録されているわけですが、
一方で以下のような単語は収録されていません。
「おぼす」「奏す」「北の方」「さま(を)かふ」「ほどに」
これらの単語は古文を読み慣れている、特に読解総合問題に
多く当たっている人にとっては知っていて当たり前で
わざわざ単語帳にまで収録しなくても良いような「常識的」語彙です。
「おぼす」や「北の方」はまず間違いなく設問として見ていますし
「奏す」や「ほどに」も直接ではなくとも読解のキーワードとして
繰り返し目にしているからです。

「ひとやりならず」や「らうらうじ」は覚えていなくとも
失点につながる可能性は高くありませんが
「おぼす」や「ほどに」などは知らなければ文脈を把握できず
古文の読解問題全体が壊滅する可能性もあります。
かといって「フォーミュラ600」をけなすわけではありません。
「おぼす」や「奏す」といった敬語は巻頭の見開きに収録されていますし
それらも含めここに上げた単語は同著者の「古文読解をはじめからていねいに」
で全てカバーされているからです。

「フォーミュラ600」を使うなら巻頭の敬語も必ず覚えること、
相当古文に慣れている人以外は「読解はじてい」を併用すべきであること
が注意点として挙げられます。
むしろ最頻出レベルの220語だけを覚えたら「読解はじてい」を先行し
「常識的」な知識を先に身につけておくべきだと考えます。
本格的に古文を学んだことのない人が超進学校の優等生を真似て
単語だけ覚えてみても、極めて限定的な効果しか期待できません。
もっとも「読解はじてい」の豊富な例文には文法解説がほとんどないので
その使用に際しても相当な努力が必要になるでしょう。