天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

参考書・問題集のインフレはいかがなものか

詳しく興味を引く解説、自然に実力がついていくような設問・問題の配列、
初心者でも理解できるステップ、覚えやすさにとことんこだわったレイアウト…
私は、優れた参考書・問題集が、文化的価値の高い「作品」であると考えています。
また、家が貧しかったり、良き指導者にめぐり合えなかったりという不運な生徒でも
優れた参考書や問題集をうまく活用すればトップクラスの学力をつけることができます。
学習参考書には、夢があるのです。

ですから、新しい参考書や問題集を物色しにいくのは非常に楽しいことなのですが
最近の新刊・改定版を見ると残念で仕方のないことがあります。
値段が、高いのです。
改定のたびに上がる価格に、ため息が出てしまいます。
私が受験生だったのは10年も前のことではありませんが
参考書や問題集は概ね1冊600円~800円くらいでした。

最近だと、大手出版社の新刊や改定版は一冊1000円を越える定価が普通です。
分厚い辞書型参考書でもないのに1500円を超えるような本も増えてきました。
確かに、解説が充実したりCDがついたりで値上がっているものも多いでしょう。
5年前と比べても、ずいぶん便利になったものだと思います。
しかし、明らかに内容とは関係ないイラストや派手な表紙による値上げだとか
1冊の問題量を少なくしてシリーズものにするような実質値上げも目に付きます。
もっとも残念なのは、そういった営業力の強い本に押されて
中身の優れている本が絶版になってしまうことです。

奇妙な値上げ競争は、世界に誇るべき参考書文化を守るためにも、
学習の機会均等を維持するためにも、どこかで歯止めをかけるべきだと思うのです。
一部の「医学部向け」書籍や大学の教科書のように1冊5000円が相場になっては
ますます低所得者の学力向上は困難になってしまうでしょう。
さらに、ネット授業の高品質化・価格低下が進んでいけば
予備校の講義を取るよりずっと安いという優位性も崩れ、
受験参考書という文化自体が衰退してしまうかもしれません。
もし、私にその力があったとしたら
学習参考書を非課税にして、さらに控除を認めるような政策を実施します。