天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

過去問ファーストの落とし穴とその対策

 私は東大を受験するにあたって、日本史や古典といった一部の科目を除いては過去問をあま使いませんでした。

  もちろんモーニングで好評連載中の「ガクサン」でも語られているように、過去問を重視するのは受験勉強の王道と言ってもよいくらいよく知られた方法論です。

  しかし、文字通りの過去問中心の学習では通用しないこともしばしばあります。それは大きな傾向の変化があった場合です。私が受験するほんの少し前にも大きな傾向変化がありました。具体的なことを言うと、高2時点で試しに受けてみた東大模試と高3時に受けた東大模試とでは形式も難易度も大きく異なっていたのです。

  もちろん傾向が大きく変化したからといって、自分が受験するときには元の傾向に戻る可能性もなくはないので、蚊ならずしも過去問学習がムダとは限らないのですが、せっかくの勉強が空振りに終わってしまう可能性も高くなります。

  ではどうするか。共通テストのように、「これからはこういう問題にしますよ」という宣言がある場合は、それを参考に似た問題を多く演習するのが効率的でしょう。ただし、ある程度の幅をもたせるほうが安全です。

 たとえ新しい科目の試験でも、全く新しいテストということはまれです。他大学では似たような出題がある、別の科目や別の日程では類似の問題が出題されていた、新傾向の狙いと方向性が同じ資格試験に似せているなど、手がかりは結構たくさんあります。受験者数が多ければ、大手予備校が予想問題を作ってくれます。

 手がかりが少なくとも、変化の方向性から問題を予想することはさほど難しくありません。なぜかというと、「急な傾向変化」と見えても、たいては実はそれまでにも少しずつ傾向が変わってきているからです。その方向性を基本に、ある程度の反動の可能性も考慮しつつ戦略を立てれば大きく外れることはほとんどありません。

 変化の方向性を無視して過去問そのものだけに拘泥したり、逆にサンプル問題や最新年度とまったく同形式の問題ばかりやるというのでは、本番で予想外の出題に面食らうリスクが大きいです。私が高3時に受けた東大模試にも新傾向にぴったり合わせてきたものと、ある程度以前の傾向に沿ったものとがありました。もちろん私は前者の方が成績は良かったですが、後者でも合格を計算できる程度には勉強できていたから、思い切り新傾向に合わせた対策ができたとも言えます。そのあたり、学校の役割も大きかったと思います。