天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

不快すぎる候補が他区でも足を引っ張る構造? 衆議院選挙・北海道内の雑感1

 今回の衆議院選挙では各メディアが大きく予想をはずしたり、大物議員が小選挙区で敗北したりといったことが話題になりました。

 道内では大きな議席数の変化はなく、前回と同じ勝敗になった選挙区が多かったのですが、比例で自民党が大きく得票を伸ばして議席を1つ増やしています。

 また、前回2017年の選挙と比べると、同じ顔ぶれだった選挙区ではおおむね立憲民主党候補が得票を減らしていることがわかります。政党支持率を反映しているだけとも言えますし、共産党との「共闘」がマイナスに作用したのではないかとも言われますが、ほかにも要因がないか考えてみましょう。

 私の仮説は「立憲民主党の不快すぎる一部候補が他区の候補に影響したのではないか」というものです。不快な候補を完全に落選させるには、比例区立憲民主党の票を減らすだけでなく、該当候補のいる小選挙区でもなるべく大きな差をつけ、さらに他の選挙区でも立憲民主党候補を多く落選させて復活当選を阻止する必要があります。今回、立憲民主党からは有権者の拒否反応が強そうな候補が出馬していました。6区から出馬した西川将人候補は全国的に話題になった旭川のいじめ事件で、かたくなにいじめの存在を認めてこなかった当時の旭川市長です。また、5区の池田真紀候補も週刊誌で秘書へのパワハラが報じられ、そのためか野党共闘が成立しませんでした。私は当初から、この2つの選挙区は自民党候補が大差で勝つと予想していましたが、読売新聞や日経新聞の終盤情勢分析では接戦で予断を許さないとのことでした。この分析も選挙結果に影響したかもしれません。

 結果はというと、実際に3区や10区といった当初から接戦が伝えられていた選挙区で立憲民主党候補が複数敗れたためにそれらの候補が比例で復活し、当選者と15ポイント差の西川候補や10ポイント差の池田候補は完全落選となりました。道内の有権者全体としては、結果的に非常に賢明な選択をしたということが言えるかもしれません。

開成出身の岸田総理が東大に落ち続けた理由を考察してみる

今日、岸田文雄第100代総理大臣が誕生しました。

岸田総理といえば開成出身のエリートというイメージがあり、本人が「東大に3回も落ちた」と述べてそのイメージを払拭しようとしたエピソードがニュースにもなっていました。

 

bunshun.jp

 

 岸田総理は名門の麹町中学校から開成高校に進学しています。名門の中学や高校で先生や同級生の話をよく聞いていたのであれば、当然のように東大に受かってそうですよね。しかし、そうならなかったのはなぜか。

 まず、当時の開成は今ほどの圧倒的な進学校ではなかったことを指摘しておく必要があるでしょう。岸田総理が高校生だったころの東大合格者数ランキングでは灘と教育大付属駒場(今の筑駒)がトップを争っており、開成はその次の3番手グループの一角という位置づけでした。その頃はいわゆる御三家の中でも麻布が開成より格上と見られていたくらいです。そもそも、今ほど開成だから東大が当たり前というわけではなかったということです。

 もう一つ、これはあくまで私の感想ですが、岸田総理は暗記や公式の適用は得意だが、少し違う視点からものごとを考えて自由な発想をするのは苦手という、ステレオタイプな受験秀才タイプだったのではないかという可能性があります。昔からこういうタイプは一部を除く高校入試や私立大学入試では強いのですが、東大受験には不利。なぜこのような感想をもったかというと、今回の岸田総理による閣僚および自民党役員の人事がある面においては非常に優れていると思われる半面、別な見方をすれば非常に稚拙と思われるからです。

 今回の岸田総理の人事は、総裁戦でのライバルをうまく処遇しながら長老たちの意向も汲みつつ野党やマスコミからは叩かれにくいという意味において優れていると思います。難しいパズルを見事に完成させた、という印象。一方、一般庶民からは「代わり映えしない」大臣、「国民をバカにしている」党役員と見えかねません。党役員には失言癖や過去の不祥事により、大臣にしてしまうと野党やマスコミから叩かれそうな面々がそろっている、というか、揃いすぎているからです。言わずと知れた失言王の麻生副総裁に「ワイロ甘利」幹事長、過激派にツーショット写真をまんまと利用された「ネオナチ早苗」政調会長、不正の証拠が入ったハードディスクをドリルで破壊したという「ドリル優子」組織運動本部長、やはり失言の多い河野太郎も大臣ではなく党の広報本部長、そして極めつけが「パンツ高木」国会対策委員長

 

news.yahoo.co.jp

 とくにせっかくブラックな印象の二階幹事長を下ろしたのに、後任に真っ黒な印象の「ワイロ甘利」というのはあんまりではないでしょうか?東京では河野や高市支持だった自民党支持層を取り込もうというか、単に自民党の足をひっぱるだけになりそうな動きも出てきているようですし、衆議院選挙がおもしろくなってきましたね。 

これから進学実績が伸びそうな高校を調べてみたらスポーツの強豪校が目白押しだった件

 たいていの地域の高校受験では公立トップ校が危ない場合、合格確実圏の2番手、3番手を受けるというのが主流の受験生の動きです。しかし、学区の統合によって公立トップ校に優秀な生徒が集中する現象に私立高校の授業料無償化が重なり、多少危なくても公立トップ校を受けるという動きがじわじわ増えてきました。これにより公立トップ校の不合格者を取り込んだ私立高校の進学実績が伸びて公立2番手以下の高校を逆転していく現象が起きつつあり、しばらくの間は続くと思われます。滑り止めである以上、東大や医学部の合格者を大きく増やすのは難しくとも、地元国公立大学への実績が伸びていけば、やがては公立2番手レベルの高校の進学実績を上回り、埼玉の栄東のような「滑り止めの星」が各地に出現するかもしれません。その候補になる、公立トップ校との併願者が多い高校を並べてみました。まずは関東以北編。

  ご覧のとおり、スポーツの強豪が並んでいます。日大の地方における存在感の強さもわかりますね。

  北海道 札幌第一  

  秋田 ノースアジア明桜 宮城 仙台育英  山形 日大山形

  茨城 土浦日大 群馬 農大ニ高  栃木 作新学院

  長野 長野日大 新潟 新潟明訓 石川 星稜 富山 富山第一 

  埼玉 栄東  千葉 昭和学院秀英 

  なお、東京都内では早稲田実業、神奈川では慶應義塾が公立トップの併願校としてメジャーですが、この2校はほぼ全員が早稲田・慶應に進学するので進学校としての性格は弱いです。

  

数学検定準2級の傾向と対策

 数学検定は3級を中心に受験者数が結構多い資格試験ですが、その傾向と対策についてはあまり実用的なものがなかなか見当たりません。

 小中学生でも数学検定の3級や準2級はいい目標になるので、傾向と合格のための勉強法をまとめてみました。

 数学検定の準2級は、「高1程度」ということになっていますが、実際には中3の範囲も多く出題され、難易度が高くなりやすいです。また、高1の範囲の中にも因数分解や確率など、中学内容の「発展事項」として扱われ、実際難関高校の入試で頻出する分野があります。

 公式にもおおよその配分して 中3内容40%・高1内容50%・特有問題10%程度と記載されています。特有問題というのは、公立中高一貫校適性試験によく見られるようなその場でルールを読み、それを適用するという問題であることが多いです。ある程度時間をかけることができれば、得点しやすいでしょう

  数学検定は一次試験(計算技能検定)と二次試験(数理技能検定)に分かれます。一次試験は計算練習だけで十分対応可能なのに対し、二次試験では応用的な文章題が中心となります。合格ラインの得点率は一次試験が70%に対し二次試験は60%とやや低くなっていますが、現実的には一次試験はまあなんとかなる、二次試験が勝負だという受験生が多いと思います。

  二次試験の対策をする際は、ひとつ知っておきたいことがあります。それは、高1範囲はほかの範囲と比べ、二次試験でも公式に当てはめるだけのような易しい問題が出題されやすいということです。したがって、合格ラインの60%を確保するためには中3までの範囲をしっかり学習しておき、高1範囲はごく基本的な問題集さえ解けるようにしておけば十分ということになります。大学入試で頻出の場合分けが必要な二次関数の応用問題などは出題されにくいし、されても数は少ないため合否には影響しにくいのです。

 中学範囲の中には高1範囲として出題されやすい分野との兼ね合い上、一部出題されにくい分野もありますが、高1範囲の基本を理解しやすくするためにも一通り学習しておくことをおすすめします。公立高校入試向けの標準的な問題集を一冊やっておくといいでしょう。

 高1範囲の学習には、形式上いくつかコツがあります。数検準2級の一次試験は問題数が15問と3級よりかなり少なく、その中には集合や円周角の定理など計算量が非常に少ない問題も含まれます。また、二次試験は時間が90分と長い割に、「答えのみを記入してください」という問題も意外と多く時間に余裕があるという特徴があります。ひとつひとつ原則から考えて答えにたどり着くというやり方でも十分時間内に解き終えることができるので、公式や解法を細かく覚える必要はありません。関数(方程式・不等式含む)はなるべくグラフを作成して条件を考える、三角比は単位円にsin、cosを書き込んで関係を考える。全ての公式を知らなくても合格だけなら十分可能です。したがって、ひとつひとつグラフや図を書きながら理解する、正攻法の学習で対策するのがおすすめです。

 もうひとつ、実用性を重視するということからの頻出分野があります。「測定技能」と称し余弦定理を用いて実際の長さを答えさせる問題や天気予報など実際に起こることの確率を計算する問題には、過去問などを通して慣れておくと有利です。

 

 ちなみに、1つ上の数学検定2級に合格するためには数学1A(高1範囲)の標準的な例題を一通り学習していなければ厳しいため、必要な学習量が急に増えます。英語など、他の科目の進み具合も考えて挑戦すべきだと思います。

 

 

 

 

 

 

 

数学検定3級の傾向と対策

 数学検定は3級を中心に受験者数が結構多い資格試験ですが、その傾向と対策についてはあまり実用的なものがなかなか見当たりません。

 小中学生でも数学検定の3級や準2級はいい目標になるので、傾向と合格のための勉強法をまとめてみました。

 数学検定の3級は、「中3程度」ということになっていますが、実際には中1中2の範囲のほうが多く出題され、難易度も高くなりやすいです。

 公式にもおおよその配分して 中1内容30%・中2内容30%・中3内容30%・特有問題10%程度と記載されています。特有問題というのは、公立中高一貫校適性試験によく見られるようなその場でルールを読み、それを適用するという問題であることが多いです。ある程度時間をかけることができれば、得点しやすいでしょう

  数学検定は一次試験(計算技能検定)と二次試験(数理技能検定)に分かれます。一次試験は計算練習だけで十分対応可能なのに対し、二次試験では応用的な文章題が中心となります。合格ラインの得点率は一次試験が70%に対し二次試験は60%とやや低くなっていますが、現実的には一次試験はまあなんとかなる、二次試験が勝負だという受験生が多いと思います。

  二次試験の対策をする際は、ひとつ知っておきたいことがあります。それは、中3範囲はほかの範囲と比べ、二次試験でも公式に当てはめるだけの易しい問題が出題されやすいということです。したがって、合格ラインの60%を確保するためには中1・中2の範囲をしっかり学習しておき、中3範囲はごく基本的な問題集さえ解けるようにしておけば十分ということになります。高校入試で頻出する二次関数と図形(特に三平方の定理)の融合問題などは出題されにくいし、されても数は少ないため合否には影響しにくいのです。以下のような問題集を解けるようにしておき、過去問などで時間配分を練習すれば、小学生でもわりと無理なく合格可能でしょう。

 

 

  

 

 

 

 

 

進学校の合格実績評価の考え方について

  高校の進学実績を考えるとき、もっとも参考になるのが一定以上のレベルの大学に対する現役合格率です。クラスから何人程度がそれ以上のレベルの大学に合格できるか、学年で何位くらいならその大学に合格にできるか、といったことが推定できるからです。

 例えば東大現役合格率が5%を超えていれば、平均してクラスから複数東大に現役合格できる学校だということです。また、東大・京大・一橋・東工・国公立医学部のいずれかへの現役合格率が25%を超えていれば、クラスから10人はどこかの国公立医学部にであれば合格できる程度の学力があるということが推定できます。

 ここで扱いが難しいのが私立の特別クラスです。単純にクラスから何人合格ということであれば、私立の「東大クラス」などの合格実績が公立トップ校に匹敵するということもありえます。しかし、大抵の場合特別クラスには他のクラスとの入れ替え制度が存在します。つまり、「最終的に特別クラスに所属していた生徒の実績」=「特別クラスの」とは言えないわけです。

 また、学校全体が進学校でない場合、言い換えると進学コースの生徒が少数派の場合、特別クラスの生徒といえどほかのクラスからの影響は無視できないと思います。

 そういうわけで、特に地方の私立高校の実績については、「○○クラスに限ればもう少し上だろう」とは言えそうですが、「○○クラスの合格実績が公立の○○より上」とは言い切れないため、あいまいな評価にならざるを得ないでしょう。

進学校の勢力図の変化について(総論・全国版)

 近年の進学校の大学合格実績ランキングの変化には、個々の学校の事情ではなく全国的に大きな影響を与えている、いくつかの根本的な要因があります。これらにより、県内のトップ校が入れ替わるような例もあるようです。

 

1 遠くの有名校を避け地元のトップ校を選ぶ地元志向。

2 男子校・女子高を避け共学校を選ぶ共学志向。

3 公立中高一貫校の増加。

4 公立高校の学区統一の動きと私立高校無償化。

 

 1によって、ラ・サールをはじめ遠方から生徒を集める高校のランク低下、各地域トップ校のランク上昇が起こっています。首都圏では東京一極集中がいくぶん緩和され、埼玉・千葉・神奈川のトップ校がランクを上昇させました。

 2によって共学化した有名私立に加え公立トップ校もランクを上昇させています。首都圏の日比谷や横浜翠嵐が東大合格者数を大きく増やしたほか、九州の久留米大附設がラ・サールを抜いて地域トップになり、近畿の西大和と北野も大きくランクをあげています。

 3は地方においても大きな影響があります。公立中高一貫校に中学受験組のトップ層が一定程度流れるため、各地で公立一貫校が東大や国公立医学部現役合格率の地域上位に出現しました。逆に地域トップ校をのぞけば、医学部に現役で合格できることで評判を保っていた地方の私立一貫校は厳しい立場に立たされつつあります。

 4は公立トップ校の躍進の主因とも言えるでしょう。公立トップ校に人気が集中すると当然不合格者も増え、その受け皿になる私立高校のランクも上がっていきます。二番手、三番手クラスの公立校を私立が逆転する、それまでは進学校として認知されていなかったような学校からコンスタントに東大や国公立医学部の合格者が出るということが起きてきています。