天流仁志の受験情報ブログ

東大法学部(政治コース)卒、受験戦略研究の専門家です。ノウハウの大部分は「学習の作法」を始めとする著書で公開しており、本ブログは今のところその補完的な位置づけとなります。趣味の選挙の話もたまに書きます。

北から目線で考えた新大学群MIDoRi(みどり)

 地方からの目線で私立大学を分類すると、第一志望の国立大学のレベルごとに併願校になりうる大学ということになります。

 最上位は早慶、旧帝前期の滑り止めはMARCH・関関同立ということになるでしょう。ではその間くらい、やや厳しいが東大を受ける、東大ではないが北海道外の難関大を狙うような層ではどのあたりが併願先として考えられるでしょうか。

 早慶では成功率が低すぎる一方、MARCH(明治以外)や関関同立同志社以外)を候補に入れるくらいなら前期から北大を受ける。とすれば、考えられるのは明治大学同志社大学に加え東京理科大学ICUあたりではないでしょうか。これらをまとめると「MIDoRi」という新大学群が出来上がります。 

 もっともこの層の受験生は前期がダメな場合、後期は北大を受けるので、実際には相当数が北大に進学する(MIDoRiは蹴られる)ことになりそうですが。

 

 

北大合格者数はどの高校がどれだけ減っているか

news.yahoo.co.jp

 北大の首都圏出身者増加、道内出身者の減少がニュースになっていたので、具体的に10年ほどで北大合格者数がどの高校からどれだけ減ったかをまとめてみました。

      2013  2023 増減

札幌北   126   120  −6

札幌南   112    84  −28

札幌西   115    61  −54

札幌東    98    52  −46

札幌旭丘   58    26  −32

 

 この期間で見ると東西と旭丘は半減、比較的堅調な北高でさえ減少しています。南高や西高は浪人が減った影響が結構ありそうですが、それにしても首都圏からの受験生に札幌市内の受験生が押し出されているという傾向は間違いありません。南高の中下位層、東西の上位層、旭丘のトップ層のそれぞれが首都圏難関校の中下位層や上位校の中上位層に太刀打ち出来なくなっているということです。

 ふつうに考えて、南北の上位層、東西のトップ層以外は北大志望者全体でみると学習が遅れているということです。追いつくためには、首都圏の高校生以上に勉強するしかないでしょう。

今の日本の入試は、実は極端な理系軽視になっているのではないか

 日本の入試は中学受験なら算数、大学受験なら数学で差がつきやすいので一見すると理系重視です。しかし、ちょっと見方を変えてみると実は理系、特に数学をあまりにも軽視した入試のようにも思えます。

 わかりやすい例でいえば、今や難関大学では英検準1級(建前上は大学内容)レベルの英語力があたりまえです。さらに英検1級レベル(大学内容)の英語力も大いに評価されるのに対し、数検1級レベル(大学内容)の数学力はまるで評価されません。その代わりに高校範囲までの複雑なパズルのような問題を解くことが評価されるのです。 

 中学入試にしてもそうで、高校内容の体系的な読解力や社会の知識は評価されるのに対し、三角比や二次関数の知識・技能が評価されることはありません。受験算数に関しては、場合の数や平面図形など分野によってはかなりがんばっているので、受験数学よりはまだマシのようにも思いますが。

 これが理系軽視に見えるというのは、海外の入試や50年前、100年前の入試と比較しての話です。主要国の主要な形式の数学入試問題は、だいたい日本の受験数学のように複雑な問題はありませんが範囲は広いというものが多いです。日本の入試もどんどんさかのぼっていくと、今より単純な問題が中心だが範囲は広いというところに行き着きます。

 日本の(難関大志望の)高校生の理系科目の学習範囲は諸外国と比べたときに遅れをとっているだけでなく、過去と比べても狭くなっているのです。因果関係は不明ですが、受験数学の複雑化と日本の相対的な国力低下は同時に進行しています。狭い範囲での複雑な問題、というと共通テストの英語がどんどんそうなってきているのも気になりますね。

低い道コンボーダーが示すのは多分広がった地域格差

 公立高校入試は道コンのボーダーが発表されましたが、予想よりも一段と低いですね。

分析を読むと、どうも私は特に数学や社会の出来具合を見誤っていたようです。この地域ではあの形式なら普段の宿題や定期テストでよく見るタイプだから、ほとんど影響ないと思い込んでしまっていたことが原因かもしれません。多くの学校では、まだまだ新傾向の宿題や定期テストが成立していないということなんでしょう。

 ボーダーを見て思い出したのが裁量問題導入当初のこと。当時もトップ校でも7割そこそこで合格できる、地方では軽く5割を切るという衝撃的なボーダーラインが発表されましたが、今回は点数表示のない学校や内申がよければ当日点は500点中100点といった学校が目立ちます。倍率の時点である程度予想されていた江別市小樽市に加え、苫小牧・室蘭や北見でも理数科を除けばボーダーラインが崩壊寸前です。すでに完全に崩壊していると思しき地域のボーダーは発表されていないようです。

 高校入試がモチベーションにならない地域では学力低下が避けられないでしょうから、ますます札幌東西南北の学区外は人気が出るでしょう。今年は札幌南の学区外が大激戦なのではないかと話題になっていましたが、地元の高校のレベルが下がり過ぎという地域がどんどん増えていることを考えれば、起こるベくして起きている現象と言えるでしょう。GLS予備校の通信科では、どこにも負けない新傾向対策が可能です。今回の入試を踏まえた説明会兼体験授業も随時行なっておりますので、興味のある方はぜひホームページのお問い合わせフォームからお申し込みください。

 

北大と北海道公立高校入試の感想〜毎年傾向を変えるという塾対策

 北大前期はここ数年の英語、数学の難化が一転し、両科目とも点差がつきやすい問題に戻りました。特に文系数学、ここまで大胆にしてくるのはさすがに予想外でした。一方で物理がかなり難化したので、医学部・獣医学部を除けば理系の「難化した数学より理科で稼ごう」という対策をした受験生は完全に裏目に出た形でしょう。同様に、医学部・獣医学部受験生のうち数学頼みで難問で差をつけようと考えていた人たちもアテが外れた形です。今後数年は数学難問型と従来型に近い問題の両方を想定した対策が必要になるでしょう。当然受験生の負担は増えます。

 公立高校の入試は、北大同様に数学の問題がかなり易しくなったように見えます。もっともこちらは予想どおり。去年も易しくなったように見えたのに平均点が下がり、目標平均点に近づけるためには思い切った易化があるだろうと考えられたからです。ただ、だからといって簡単な問題ばかりやっていればいいわけではなく、結構工夫した対策をしていました。他塾でも、今年の入試よりはかなり難しい道コンの過去問を扱ったところが多かったと思います。

 そして、国語や社会の新傾向の問題。単純に難しいかと言われると大人にはむしろ易しく見えるのですが、従来型の傾向の問題に慣れていると面食らったという以上にできなくなる可能性が高いです。単純な知識や小手先のテクニックだけで問題を解くことに慣れてしまった頭では処理が間に合わなくなるからです。追い込みと称して、古い過去問や単純知識の復習を懸命にしていた受験生は、むしろそのせいで点数を落としてしまった可能性があります。

 国語は私がピンポイントで変だ、と言っていた抜き出し問題がなくなりました。ろくに内容を読まずに形式だけ揃えるやり方が通じなくなったという点では「よくやった教育委員会」と言いたいところですが、採点する側の負担が大きくなるなど別な問題も出てくるでしょう。

 社会も用語の書き取りは公民に集中し、理解や応用力を問う問題が中心になっています。用語が公民に集中するのは、現象理解に直結する用語を選んでいるからでしょう。論述問題については、対策として解いていた他県タイプの問題ほど洗練されていなかったのではないかという感想も聞かれましたが、よく工夫されているとは思います。一応過去数年はこの方向で動いて来ていたのですが、基本とは言えない人名や地名を書かせる問題があったりして「用語をしっかり書けるように」という呪縛がまだまだ有効だったと思います。

 このままの方向で振りきれてくれればいいのですが、まだまだ今年の北大のような揺り戻しにも警戒が必要となると、引き続き受験生はもちろん、塾としても対策が難しいでしょう。従来型と新傾向の両睨みで勉強する負担は大きいと思いますが、塾に通えるかどうかでの有利・不利を軽減する効果はあるのかもしれません。とはいえ、現状だと市販の参考書で新傾向の対策をするのは難しい科目もあります。中学受験用や大学受験用ならたくさんあるのですが、高校受験用だと塾用教材や学校専用教材が先行していますからね。

 

今年の北海道公立高校入試問題とボーダーについて

 今年の公立高校入試問題は、わりと道教委の難易度調整が上手く行ったのではないでしょうか。私の感覚で平均点を予想するのは無理ですが、漏れ伝わる反応からすると平均点が50点から極端に離れるような科目はないと思います。そこで合計でも平均得点率が50%ほどと仮定した場合の、札幌市内の進学校について合格者平均点とボーダーを試算してみました。いずれもAランクが前提です。もちろん、受験生の動向や実際の採点基準、難易度によってこの数値は変わります。また、札幌南以外はランクによってボーダーが大きく異なることもありますのでAランク以外なら合格者平均≒ボーダーと考えれば実態に近いでしょう。あくまで仮定に基づいた試算ですので、当てになるデータを見たい人は同コン事務局の発表を待ってください。

 札幌南 合格者平均420 ボーダー400

    札幌北 合格者平均400 ボーダー385

    札幌西 合格者平均380 ボーダー367

    札幌東 合格者平均372  ボーダー358

 さて、今年の入試問題の難易度ですが理科はそこそこ難しいが他は簡単、特に数学がかなり簡単という印象です。ただし全国的な傾向と同じく、国語や社会が楽勝科目ではなくなっています。当予備校では変化の方向を重視して先行する地域の過去問や近そうな予想問題を中心に対策したので特に難しいとの声はなかったのですが、古い年度の過去問やそれをもとにした問題を中心に勉強していた生徒には難しかったかもしれません。

 

 

 

 

来年度の生徒募集について

 コロナ禍中は積極的な生徒募集を控えてきたのですが、今年度からは特に制限もないので募集再開のお知らせです。社会情勢や入試制度の変化によって、コロナ前とは違う点も大きいことをご承知おきください。以下、募集要項の概要になります。希望者はGLS予備校のホームページよりお問い合わせください。

 小学生コース 先取りを進め中学・高校内容を学習しつつ北海道教育大学附属札幌中などの入試にも対応します。低学年では、先取りに必要な語彙力、読解力を身につけます。進度、希望によっては中学・高校コースに移ることができます。

 中学受験コース 北嶺中の入試に対応します。6年生以外は他の進学塾と併用可能です。遅くとも5年生の時点で附属中入試程度の基本は完成させ、6年生では応用問題やテストの受け方を中心に練習します。

 中学・高校コース 志望大学に合わせたカリキュラムで先取りを進めます。中学生は英検、数検の2級が一つの目安になります。高校入試を最終目標とした指導は行いません。受験学年からの入会は割り増し料金となる場合がございますのでご注意ください。また、他塾との併用はお断りする場合があります。

 合宿コース 遠方の学校に通っている方、週1回の通塾が難しい方も利用可能な、長期休暇中に集中的に学習するコースです。